自治市民宣言

自分の頭で考え行動する自治市民~Sovereign Individuals として生きる

思考訓練 - 日銀が企業の大株主になる?

自治市民のパスポートを得るには、瞬間の感情の乱れ、思考ノイズを鎮めて、自分の頭で冷静に考えることです。

2020年5月28日付の朝日新聞で、日銀が日本株の最大大株主になったことが報じられました。 日銀といえば日本の中央銀行です。中央銀行が多くの会社の大株主になる?
あまりストレートには理解できない事態です。

ゆっくりと順を追って考えてみましょう。

そもそも日銀が保有している株式とは何か?  ある人たちが業を起こして企業となるためには通常おカネが要ります。その資金を自分たちで賄えれば素晴らしいですが、普通はそうはいきません。そうなると、他人に自分たちの会社におカネを出してもらうために、自分たちの計画を説明することで出資を募ることが必要となります。


他人のおカネを自分たちの会社に入れてもらうために必ずしも株式会社とする必要はありませんが、これが今一番一般的な形となっています。

さて日銀が株を買うおカネはどこから来ているのでしょうか?  わたしたちが払った税金?  いえいえ、日銀だけに与えられた特権というのはおカネを刷ることができるということです。日銀は、彼らが刷ったそのおカネを使って株式を買い、会社経営資金として会社に渡している、ということです。

しかし、日銀が例えばトヨタ株を買ったからと言って、車の作り方に日銀が口を出すわけでもなく、野村証券の株主になったかといっても株式を営業するわけでもありません。

この当たりでおカネと実体経済は分離してきて、資本主義の根源はこのあたりにあります。すなわち、出資者はおカネを出しても日々の業務の細かいところまで口はださない。  しかし会社が利益を出しても、そのすべてが社員に行くわけではなく、手は出さなくともおカネは出している人々、すなわち出資者日銀に利益が配分されます。

しかし、日銀は買った株式が値上がりして利益を出すために株式に投資しているのでしょうか? いえいえ、日銀はおカネが欲しければ刷ることができます。なんでそんなまどろっこしいことをやる必要がありましょうか。

彼らが株式を買っているのは、株価を支えて投資家に損がでないようにすることで間接的に景気を下支えする意図を持っていることと、加えて会社の経営資金を潤沢にすることで会社が生産活動により多くのおカネを使うことを期待して株を買っているわけです。

しかし、ここで疑問が出てきます。

日銀はおカネを刷って株式を買っています。ではその刷ったおカネを政府の財政支出に使うとどうなるのでしょうか? 例えば、公共事業をやるとか、今回のコロナ禍対処の給付金の財源としてです。

これが赤字国債による財政支出となり、これは悪評プンプンです。この赤字国債を財源とする財政支出と日銀による株買いがどのように異なるのか?

最大の違いは、日銀から提供されたオカネの使い方を、民間が決めるか、公務員、あるいは政治家が決めるか、ということ。現金給付では、公務員が決める過程も入りません。単純に、政府の赤字が国民の資産と化す、だけです。

日銀による株買いには懸念の声は聞かれるものの、経済学者、識者から反対の声はそれほど出ていないようです。

それに対して、日銀=政府の貨幣発行による財政支出にはありとあらゆるところから反対の矢が飛んできます。

この理由はいったいどこにあるのでしょうか?

 
おやおや、日銀の株買いに対して、日銀負担による政府財政支出の是非、、
これが次の思考訓練の題材となってきました。

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2020年5月28日付朝日新聞